「おお。」

花が着地したとき、修道士たちから声がもれた。

振り向いて見たが、ここからではよくわからなかった。
オーベール師とともにバルコニーからテラスに向かった。

花は、中央のタペストリーに落ちていた。
修道士たちはまわりのタペストリーを片付け、
師と俺の通り道を作った。

師が花を拾って俺に手渡した。
タペストリーに描かれているのは、
手に剣と秤をもち、足には魔物を踏みつけ、
黄金の翼をもった、大天使ミカエルであった。

「あなたの名はミゲーレだ」

ミカエルを他の言語で発音するとミゲーレになる。

「そんな偉大な名前、私がいただいていいのでしょうか?」

さすがに恐縮する。
この山の聖堂も修道院も大天使ミカエルに捧げられたものだ。

「神がそうお決めになったのだ。」

オーベール師は微笑んだ。



そののち聖堂に入る。
以前興行でミカエル山に来たときは、この聖堂に入ることはなかった。

祭壇にひざまずき、こうべを垂れると水を注がれた。
これが洗礼というものらしい。

そうしながら、俺は成り行きでここへ来ることになったが、
この人たちの信仰に関してほとんど知らない。
西の諸国ではこの宗教が生活の随所に溶け込んでいた。
なのでなんとなくは知っていたが。

どうも順番が逆なようだった。

(まあいいさ。これから知っていけば。
q、俺はもうサダクローじゃないぞ。
ミゲーレって呼べよ。)