未明、
ミカエル山を囲む海が
再び干潮を迎える。

「さ、帰ろうか。」

大将の泥濘が
兵隊たちに言った。

俺と又三郎は
雑兵に捕らえられながら
歩かされた。

雑兵に
縛られた後ろ手を
つかまれ、
俺の前を歩いていく又三郎。

又三郎はもう、
いっさい俺を見ない。

又三郎の後姿は
完全に俺を拒絶し、
俺の存在を
無きものとしていた。



もうすべて、終わったんだ。


自分の罪を
感じることすらできない。

俺は屍だ。



大階段を降り、
修道院の門を出ると、

大通りにたくさんの馬が
ひしめき合っていた。

大通りといっても、
小さな宿場町だ。

道という道が馬だらけだ。

宿場町の人たちは
姿を消していた。

家の奥か、地下に
身をひそめているのだろう。

浜に下りていくと、
すでに乗馬した騎兵たちが
待機していた。

手には松明を掲げていた。
腰に矢筒をつけ、
肩に弓を背負っている。

なるほど、ケンタウロスか。