大聖堂の脇にある懺悔室に
トラビスを連れて行った。

懺悔する者が入る方の
個室の扉を開き、
トラビスに入るよう促した。

俺は普段なら
司祭が入る方の個室に入った。

「おいおい、何の真似だ?
君がそっちに入るなんて。」

トラビスは戸惑っている。

両者を隔てている
仕切りに空いた無数の穴から
トラビスが透けて見えた。

俺は深呼吸をした。

「マリアとの関係は
続いているのか?」

「ああ。」

「マリアを愛しているか?」

トラビスは黙った。
うつむき、組んだ手を
まっすぐ額に当てた。

「愛しているよ。」

俺はうなづいた。

仕切りごしに、
トラビスの目を見つめた。

闇に、深い緑色の瞳が光った。
この、美しい色とも、
これでお別れだ。

「今から俺が言う言葉は、
俺の言葉ではない。

神の言葉だ。

黙って聴け。」

俺のただ事ではない
雰囲気が伝わり、
トラビスは真剣になった。

「この朝の船で、
マリアと共にこの山を出ろ。

そして、
絶対に後ろを振り向くな。

修道士のローブと、
ロザリオは置いて行け。」

それだけ言って、
俺はトラビスが
何か言う前に懺悔室を出た。


決して、
その後に起こることは
口にしていない。

俺は誰にも言ってない。