寝床についてからも、
眠れるわけがなかった。

心臓が鼓動し、
手足は汗でぬれ、
腋からは汗が流れ続けた。

神経質男とせむしの
寝息が聞こえる。

せむし、ごめん。

明日、おまえは死ぬんだ。
おまえが言ってた
ケンタウロスの話、
うそじゃなかったんだな。

ほんの少しでも、
警戒心があれば、
無名が怪しい奴だって、
わかったのに。

俺は何にもわからなかったよ。


俺のベッドの下段は
今夜も空だった。

トラビスが出かけているのだ。

俺は何度も、何度も、
同じことばかり考えた。

なんとか、
全員が助かる方法はないかと。

だけどやっぱり、
そんな方法はない。

俺は又三郎だけを選んだ。

又三郎だけを助けるために、
この修道院の者、
全員を殺すんだ。

殺すのは俺だ。

そんなことが許されるのか?
許されるはずがない。

そんなことになって、
又三郎は喜ぶか?

そんなはずがない。

自分だけが助かって、
又三郎が喜ぶはずがない。

だけどそれでも
俺はどうしても
又三郎を失いたくない。


救いようもなく自分勝手。

おそろしいほどの罪。


だけどどうしても
又三郎だけは失いたくない。



握り締めている寝具が
汗でべっとりと湿ってくる。

そのうちに、トラビスが
こっそりと帰ってきた。

「トラビス」

寝支度をしている
トラビスを呼んだ。

「ミゲーレ、起きてたのか?」

俺は二段ベッドの
はしごを降りた。

「一緒に来てくれ。」

「なんだ?」

俺はトラビスの腕をつかんで
引っ張っていった。