食堂には、
ニカイアの姿が見えない。

どこで飯を食っているのだろう?

俺はさっさと食事を始めている
ニコルの隣に座った。

「あのニカイアって、
どんな奴なの?
なんか全然
取っ掛かりが無くって、
どうしたらいいのかわからない。」

俺は皿の上の
羊の肉を骨からはずしながら
話しかけた。

「あいつの出身は、
その呼び名のとおり
ニカイアという街だ。

もともとは騎士階級の
家柄だったが、
ロマリアの進軍を受け服従した。

その時の戦いで
兄と母親を亡くしている。

今、故郷には父親がいるはずだ。

12歳の時、地元の修道士になり、
魔法が使えるので
こっちへ移ってきたんだ。」

ニコルは食事を続けながら
俺を見もせず、淡々と話した。

「魔法が使えるだって?」

「そうなんだ。
どうやら攻撃系の魔法らしい。
使っているところを
見たことは無いが。」

あんな、何を考えているのか
わからないような奴が、
攻撃魔法を使えるとは恐ろしい。

そして、子供の頃に
戦乱に巻き込まれたことが、
あのニカイアの
覇気の無い性格の
原因なのだろうか。

俺はニカイアという街に
行ったことはなかった。
ただ、ニカイアの
すぐ隣の街、マッシリアには
道化師時代に行ったことがある。

ミカエル山からはだいぶ
南下したところにある
大きな港町だった。

陽光にあふれ、
さまざまの人種の行きかう
活気のある街だった。

そのかわり
喧嘩っ早い海の男たちの
争う声があちこちで
聞かれるような所だった。