二人で、空中回廊を
ゆっくりとめぐった。

「キリストにも
子供がいたって
おかしくはないと思う。」

俺がそういうと
トラビスが歩を止めた。

「そんなことは
福音に書いてない。」

トラビスにしては
めずらしく
きっぱりとした
口調だった。

「だけどキリストが
生涯独身だったとも、
書いてないだろ。」

俺がそう言うと、
トラビスがじっと
俺の目を見つめた。

「君はなんで
ここにいるんだよ。」

少し批難の含みがあった。

「俺は、おまえ達の
信仰している神を
解かりたいんだ。」

「神を、解る?
簡単に言うんじゃないよ。」

トラビスの声が
少し大きくなる。

「だったら少しは、
貞潔を守る努力くらいは
したらいいだろ。」

そう言って、
トラビスは空中回廊から
出て行った。

いつも穏やかなトラビスが
ほんの少しいらだった。

マリアの件が
あいつの中で
わだかまっているのだ。

自分でも答えが出せず、
宙ぶらりんのまま放置し、
マリアを傷つけている。

それが今のトラビスだ。