「又三郎ちゃん、
この中で、
どれでも好きなの
あげるわ。」
マリアは棚を指した。
「えっ、本当?」
「私、もういらないの。」
又三郎は宝物の
物色をはじめた。
うれしそうに
なにやら独り言を
つぶやきながら、
ひとつひとつ
手にとって見ている。
その姿を眺めながら
マリアが俺に言った。
「又三郎ちゃんと
ミゲーレさんは
恋人同士なの?」
「そう見える?」
「だって、さっき、
一緒に横たわっていたわ。」
恥ずかしくて、
さすがに素直に
返事ができない。
「しあわせね。」
マリアの言葉には
羨望があった。
俺は自分の能天気さが
情けなくなった。
「僕、これにする!」
又三郎が、
小さなスノードームを
手にしている。
「そんな
小さいのでいいの?
もっと立派なのでも、
なんなら
さっきの人形でも
いいのよ。」
又三郎は
スノードームの埃を
ローブの袖口で
丁寧にふいている。
「だってこれ、ほら。」
俺の目の前に掲げた。
スノードームの中には
ルテキアのシテ島にある
ノートルダム大聖堂が
閉じ込められていた。
「ルテキアの教会だな。」
俺が言うと、
又三郎はスノードームを
ひっくり返して軽く振った。
ランタンの
やさしい灯火を受けて
舞う雪を見ていると、
ノートルダム大聖堂の中に
吸い込まれそうになる。
「お二人とも、
ルテキアに行ったこと
あるの?」
「ルテキアは
僕の故郷だよ。」
「まあ、都会の人なのね。
ミゲーレさんは?」
「俺は以前仕事で
行ったことがある。」
「そう。」
マリアは又三郎の持つ
スノードームを
まぶしそうに眺めた。
「私はこのお山から
出たことがないの。」
「ねえ、これ見て」
又三郎がマリアの言葉を
受け流して言った。
「これ、パン工房だよね。」
スノードームの
土台の部分には
ルテキアの町並みが
浮き彫りしてある。
その中にパン工房の
店先の様子が
描かれていた。
三人で
小さなスノードームを
見つめた。
この中で、
どれでも好きなの
あげるわ。」
マリアは棚を指した。
「えっ、本当?」
「私、もういらないの。」
又三郎は宝物の
物色をはじめた。
うれしそうに
なにやら独り言を
つぶやきながら、
ひとつひとつ
手にとって見ている。
その姿を眺めながら
マリアが俺に言った。
「又三郎ちゃんと
ミゲーレさんは
恋人同士なの?」
「そう見える?」
「だって、さっき、
一緒に横たわっていたわ。」
恥ずかしくて、
さすがに素直に
返事ができない。
「しあわせね。」
マリアの言葉には
羨望があった。
俺は自分の能天気さが
情けなくなった。
「僕、これにする!」
又三郎が、
小さなスノードームを
手にしている。
「そんな
小さいのでいいの?
もっと立派なのでも、
なんなら
さっきの人形でも
いいのよ。」
又三郎は
スノードームの埃を
ローブの袖口で
丁寧にふいている。
「だってこれ、ほら。」
俺の目の前に掲げた。
スノードームの中には
ルテキアのシテ島にある
ノートルダム大聖堂が
閉じ込められていた。
「ルテキアの教会だな。」
俺が言うと、
又三郎はスノードームを
ひっくり返して軽く振った。
ランタンの
やさしい灯火を受けて
舞う雪を見ていると、
ノートルダム大聖堂の中に
吸い込まれそうになる。
「お二人とも、
ルテキアに行ったこと
あるの?」
「ルテキアは
僕の故郷だよ。」
「まあ、都会の人なのね。
ミゲーレさんは?」
「俺は以前仕事で
行ったことがある。」
「そう。」
マリアは又三郎の持つ
スノードームを
まぶしそうに眺めた。
「私はこのお山から
出たことがないの。」
「ねえ、これ見て」
又三郎がマリアの言葉を
受け流して言った。
「これ、パン工房だよね。」
スノードームの
土台の部分には
ルテキアの町並みが
浮き彫りしてある。
その中にパン工房の
店先の様子が
描かれていた。
三人で
小さなスノードームを
見つめた。