部屋は四人部屋だった。
二段ベッドが二つ置かれている。

同室の三人は、七十歳ほどの老人オジジと
青年のせむしと
神経質男と呼ばれている四十くらいの男だ。

この修道院では、みなたいていあだ名で呼び合っていた。
というのも、霊名というのは、ヨハネとかルカとかマルコとか
同じ名前が多いのだ。

俺はオジジの上段に寝ていいことになった。
オジジは歯がほとんどなくて、前歯が一本だけあった。

せむしが、さりげなく言った。

「オジジは手癖が悪いんだ。持ち物に気をつけたほうがいいぜ。
貴重品はここにおかないようにな。」

ここにもそんなこそ泥みたいな輩がいるものなのか。
少し驚きだ。

「ああ、そうなんだ。気をつけるよ。」

せむしは軽くはしゃいだ様子で俺を部屋の外に連れ出した。

「あのじいさんはな、もともと泥棒だったんだよ。
生活に困って、くだらない罪をくりかえしちゃ牢屋に入れられて。
牢屋に入れば飯には困らないだろ?

役人もほとほと困って、教戒師にたのんで、じいさんをここに入れたんだ。
オジジにとってはここも牢屋も一緒ってわけ。」

「へえ。そんな奴もいるんだな。」

「でも、あんたもそうとう変わってるよな。
道化師から修道士に転身なんて。」

俺にとっては転身というより、
もともとの道に戻ったという感覚だったが、ここでするような話でもない。

「今度あの幻灯またやってよな。」

「悪いけど、もう幻灯は店じまいなんだ。」

「なんだ、つまらないな。でも今は神に仕える者だもんな。」

せむしは意味深に笑った。