コータがただの幼なじみから“好きな人”に変わったのは、1年前の、2月14日。
あの日、空はどんよりとした灰色の雲で覆われて、みぞれ混じりの雪が、公園の砂場にこげ茶色の水玉模様を作っていた。
すごく寒かった。
凍えちゃうくらい寒かった。
そんな時、ふいに触れてしまった、あいつの手の温かさ。
コータの体温があまりにも高くて……それはわたしの手から心臓まで、ダイレクトに伝って。
“あったかいね”
そう言ったのと同時に、わたしは恋心に気づいてしまったんだ。
――……どれくらい図書室で座っていただろう。
突然、電気が消え、あたりが暗闇に飲み込まれた。
「えっ? 何?」
驚いて顔を上げる。とほぼ同時に、扉の方からガチャンという金属音が聞こえた。