「……いってえ」

「夜の学校は進入禁止だ!」

「あ?」


見上げると、親父くらいの歳の男が目尻をつり上げて俺の前に立っていた。


「……おじさん、誰?」

「この高校の卒業生だ」


っておいおい何年前だよ。


「最近、けしからん若者が増えてな。夜に忍び込んで肝試しなんぞしおって」

「はあ……それを取り締まってるんすか?」

「母校が荒らされるのを、黙って見てるわけにいかんだろ」

「はあ……なるほど」


俺は転倒したときに打ち付けた尻をなでながら、やれやれと溜め息をつく。

肝試し、か。そういえばさっき、それらしきグループが懐中電灯を持って歩いてたな。


「あのね、おじさん。せっかく熱血してるとこ悪いけど、俺は別に肝試しなんかで来たんじゃないっすよ。幼なじみを助けに来たの」

「嘘つくな」

「ホントだって。あそこ見てよ、電気ついてるでしょ?」


俺は図書室のほうを指差す。が、おじさんは疑いの目を改めようとはしない。