ふわりふわりと舞う白が、俺の自転車のサドルに落ちて、すぐに溶けた。火照った体に雪の冷たさが心地いい。
――ユイ……気付いてるか?
雪だぞ。
俺は一刻も早く、ユイのもとに駆けつけたくなる。あいつと寄り添って、この雪を見つめたい、なんて柄にもないことを思う。
やべーな。なんか俺、今……
すっげーユイのこと愛しいかも……。
「……よしっ」
自分の頬を叩き、再度、気合いを注入。
鉄製の校門はかたく閉ざされている。そしてかなり高い。よじ登るためには、門の上に手をかけられるか、だ。
俺は狙いを定め、思いきりジャンプした。両手にかろうじて手ごたえを掴み、あとは懸垂のように腕の力だけで体を持ち上げる。
あと少し、もう少しだ……。
力をふり絞って体を持ち上げ、どうにか片足を門にかけた。
よしっ。と思った、そのとき。
「こらあ! 何してる!」
背後からぶつけられたガラガラ声に、弾かれたように転落してしまった。