「もうー。なんでユイはそんなに意地っ張りなのよ」
「そんなんじゃないし……」
「あげなよ、チョコ。コータのこと好きなんでしょ? たまには素直に愛情表現しなきゃ」
「べ、別にわたしは――」
「おーい、カナエ」
廊下からカナエを呼ぶ声がして、わたし達は会話をストップした。
背の高い男の子が、ドアから顔をのぞかせている。隣のクラスの橋本くん。カナエの彼氏だ。
「帰らねーの?」
「あ、うんっ、すぐ行く」
普段はお姉さんっぽいカナエだけど、橋本くんを前にすると自然と可愛らしい表情になる。彼氏のことが大好きっていうオーラが全身から出ているみたい。
……愛情表現、か。
さっき言われたその言葉が、ふっと頭に浮かんだ。