「……やっと着いたぜえ」
ふらふらと立ち上がり、服についた砂を払う。
そんな俺を不思議そうにチラ見しながら、若い男女グループが後ろを通っていった。グループはおそらくうちの生徒で、手には懐中電灯を持っている。
なんだありゃ? と思いつつも、さして気にとめず、俺は倒れた自転車を起こした。
「……さてと」
校舎を見上げ、図書室の窓を探す。うちの高校はやたらグラウンドが広いので、その分、敷地外から校舎まではかなりの距離がある。
かわいそうに、ユイ。これだけ遠いんだから、助けを呼んでも誰にも聞こえなかっただろうな。
俺はよーく目を凝らして、3階の窓を確認した。
図書室……あった!
しかも電気がついてる!
よっしゃあ。ユイ、今助けに行くぜ。と俺は気合いを入れた。そして急いで自転車に鍵をかけ、顔を上げたそのとき。
「――あ」
雪が、降ってきた。