「最初は普通にカラオケ行く予定だったんだよー」

と、カナエ。

「けどカナエが、JUNに行きたいって言ったんだよなー」

と、橋本。


「やだあ、橋本君でしょ」

「カナエだろー」

「橋本くんだしー」

「カナエだしー」


ええい、どっちでもいいわ! 俺は橋本に制裁キックを食らわす。どいつもこいつもバラ色の恋愛しやがって、ちくしょー。


「痛いよ~、コータ君」

「うるせえ。日頃の足腰の鍛錬がそんなことに使われてるなんて知ったら、バスケ部の顧問が泣くぞ」

「コータ、うらやましいんでしょー」


勝ち誇ったようにカナエが言うので、俺の怒りはマックスに達した。

ああそうさ、うらやましいさ。俺なんかまだ、ユイにバレンタインのチョコすらもらったことないのに。

……って、そうだ、ユイ!


「おいカナエ! ユイ知らねえ?」

「え? ユイがどうしたの?」

「いいから! あいつどこ行ったか心当たりないか?」

「うーん、教室で別れたからなあ……」