失恋はしてしまったけれど、自ら想いを伝える道を選んだ彼女は、すごいと思う。
わたしは、始めたくても始められない恋ってやつが、世の中にはあるような気がした。
だけどそれさえも溶かしきるくらいの熱さがあれば、恋は唐突に始まるのかもしれない。
そう、たとえば、このポケットの中のような――……。
「ねえ……寒い?」
わたしはコータに尋ねた。
「ううん。あったかい」
コータの照れくさそうな声を聞きながら、彼の体に寄りかかる。
コータの肩のラインにわたしの頭がぴたりと合わさり、こんなに近くに来たのはいつぶりだろう、と思った。
そして、どうして今までこの温かさを無視してこれたんだろう、とも。
「お前は?寒くない?」
「……うん」
わたしはうなずいた。
「あったかいね――……」