「……さっきの女の子のこと、考えてたんだ。
好きな人に断られたら、好きっていう気持ちは、どこに行くのかなあ。ちゃんと忘れられるのかなあって」
コータからこういう言葉を聞くのは初めてだったので、わたしは返答に困った。
好きとか付き合うとか、そういう類のことにわたしは疎い。身近な男の子っていえば、コータくらいだし。
だけどそのときはなぜか、あの子はきっと次の恋に進めるはずだ、と思った。
そして、そう信じたかった。
しばらく泣いて、まだお酒は飲めないから甘い物のヤケ食いでもして。ますますキレイになって、いつかまた次の恋を始められるはずだと。
そう言ったら、コータは不思議そうな顔をした。
「んな簡単なモンなのかなあ」
「簡単なんかじゃないよ。ただ、恋って理不尽なんだよ。いい意味でも悪い意味でも」
「お前が恋について語るなんて、めずらしいな」
「わたしもそう思う」
「熱でもあんのか?」
「あるとしたら、この寒さのせいだね」
わたし達はひとつのポケットの中に手を突っ込んだまま、笑いあった。