「……ねえ」
わたしはコータの服装を見て言った。
「寒くないの?」
「寒い」
「バカじゃん。そんな格好で」
「お前んちに行こうと思って家出たとこを呼び止められたんだよ。お隣行くのにわざわざコート着ねえだろ」
「そう」
コータは鼻水をすすりながら、ガタガタと体を震わせていたけれど、それでも家に帰ろうとはしなかった。
わたしはそんなコータをほって行くことができず、なんとなく公園に入って、あいつが帰ろうとするのを隣で待った。
コータは、傷ついていた。
口には出さなかったけれど、確かに傷ついているのが分かった。
失恋したのはあの女の子なのに、コータが傷つくなんて不思議だ。そして、理不尽だなと思った。恋なんて、いつも理不尽なものなのかもしれない。
冷えきった空気は静けさを増して、ついには雪まで降らせ始めた。
「……手、入れる?」
どうして、あんなことを言ってしまったんだろう。自分でもいまだに分からない。
わたしはコートのポケットを広げて、隣の彼に目配せした。