こんな場面、見ちゃいけない。そう思って立ち去ろうとしたそのとき、女の子が目元をぬぐいながら、わたしの横を走り抜けていった。
それを目で追ったコータが、必然的にわたしの姿を視界にとらえた。
「……ユイ」
いつになく弱々しいコータの声。
「ごめん、覗くつもりはなかったんだけど。たまたま通りかかっちゃって……」
「分かってるよ……」
お前んち、すぐそこだもんな。とコータが言った。
あんたの家だって、すぐそこじゃん。
何してたの?こんな近所で。さっきの女の子に告白されたんだよね?
疑問が次々に湧き上がり、そしてそんな好奇心を持ってしまう自分が、無性に恥ずかしくなる。