「誰かー!助けてーっ!」
もう一度、外の世界にSOSを叫んだ。だけど声はどこにも届くことなく、闇の中に吸いこまれていく。
「……もう……っ」
……誰も聞いてくれないんだ。わたしの声なんか。
また泣きたくなってきて、鼻をすんと啜ったら、あまりにも冷たすぎる空気で鼻腔がツーンと痺れた。
そのとき、ふと。鼻先にさらに冷たいものが触れ、わたしは空を見上げた。
「あ……」
雪だ。いつの間にか、粉雪が降り始めていた。
キレイ……。そうつぶやきながら、わたしは頬に落ちてくる雪の儚い感触を味わう。気紛れに踊りながら舞い落ちてくる粉雪が、闇に白を灯している。
あいつの顔が、なぜか夜空に浮かんだ。
コータ……この雪に気づいてるかな。今頃、自分の部屋の窓から見ているのかな。
一年前のバレンタイン。
あの日も、雪だったね。
今でも鮮明に覚えている。
雪の公園で、コータの手に触れたあの日の記憶――…