「あっそ。じゃあ早く帰れば?」
「そうしますよ。後であやまっても知らねーから」
「とっとと消えろ、バカコータ」
「うるせー、読書オタク。メガネ」
本を投げ捨てるように返したコータが、低レベルな捨て台詞を残して教室を出て行く。
……メガネって! お前の精神年齢は幼稚園のままか!
「ユイ。相変わらずだねー、あんた達」
入れ替わりで教室に入ってきたのは、友達のカナエだ。わたしとコータのやり取りを廊下で見ていたらしい彼女は、すっかりあきれた様子で腕を組んでいる。
わたしは本を鞄に入れると、唇をへの字に曲げた。
「だって、あいつが悪いんだよ」
「私から見ればどっちもどっちだけどねー」
「ううん。コータってさ、いちいち人の気に障る言葉を選んでるとしか思えないの」
「けど、何だかんだで付き合い長いんでしょ? ユイとコータって」
「別に。家が隣で幼なじみだから腐れ縁なだけ」
ふうん、とカナエが相槌をうちながら、意味ありげに微笑む。