ダウンジャケットのポケットからスマホを取り出し、電話帳からユイの家の番号を呼び出す。
すぐ横を通り抜けてゆく車のライトに目を細めながら、淡々と鳴り続ける呼び出し音を聞いた。
ユイんちに電話するなんて何年ぶりだろう。家がすぐ隣りだから窓から呼べば聞こえるし、今は携帯ばっかだし。
なんて考えながらしばらく電話を鳴らしてみたけれど、誰も出なかったので渋々切った。
……ユイんちは共働きだから、両親がいないのは普通のことだ。だけどユイがこの時間に帰っていないなんて、不自然じゃないか?
やっぱり、何かあったんだ。
俺はさっきユイから届いた意味不明のメールを読み返し、改めて確信する。
暗号のように支離滅裂な文章だけれど、最後の部分……「助けて」。これは俺に発信されたSOSだ。
ユイは、泣きながら俺の助けを待っているんだ。