しばらくすると、体中が冷えきって指先が痛くなってきた。暖房が切れているのだから当然だ。
ただでさえ不安なところに、この寒さはキツい。精神的にジワジワ追い詰められていく感じ。油断したらまた泣いちゃいそうだから、わたしは拳をぎゅっと握りしめた。
『お前が泣くなんてレアすぎるだろ』
コータが電話で言った言葉を思い出して、ほんとだな、と思った。わたしが泣くなんて、自分でもビックリだもん。
ていうか、コータの前で泣いたことなんか、今まであったっけ?
……あったような気もするし、だけど、よく思い出せない。
幼なじみのわたし達は共有する思い出が多すぎて、そして全部が生ぬるい。
1年前のバレンタインの日、ふたりは幼なじみ以外のものに変わったと思ったのに、結局わたしたちの生ぬるい関係は変わらなかった。
足りないものは、きっと熱だ。
あの日のコータの手みたいに、チョコレートも溶かしてしまえそうな熱さ。
幼なじみのわたしたちには、今さらそれが見つからなくて――。
そのとき突然、バサバサ!という音が背後で響き、わたしは飛び上がった。