俺はユイの姿を頭に思い描いた。教室の、斜めうしろの席からいつも見る、凛と背筋の伸びた後ろ姿。


「……あいつは……付き合うとか、そうゆうの興味なさそう」

「えーっ。兄ちゃん辛えな」

「辛えよ。本ばっか読んで、ろくに俺の相手もしねえような女だよ」

「ふーん。隣のユイちゃんみたいだね」


って、その隣のユイちゃんなんだけどね。もちろんそれは秘密だけど。


「もうすぐバレンタインなのに、兄ちゃんはボッチかー」


小4の弟にまで同情されて、俺はだんだんミジメになってくる。それもこれもユイのせいだ。あいつが全然、俺になびかねえから。


……いや、でも。

たった一度だけ……そうだ、去年のバレンタインの日。

雪の降る公園で、俺たちはふいに手をつないだんだ。

あの瞬間だけは、なんとなく心が通い合えた気がしたのに。

そう感じたのは、俺の勘違いだったんだろうか。