私は律のバイト先まで走っていた。
遅くても、返事を返してほしいって言ったときの顔が、目に焼き付いてる。
悲しいそうな顔。
明日もそんな顔見たくない。



―カランッ



「いらっしゃっ…珍しいお客が来た(笑)」

「私、律に言いたいことある!」

「え?あ、うん」



言わなきゃ。
自分のためにも、律のためにも。
私の気持ちを。



「……律が好き……」

「…マジで?…」

「嘘言ってどうする」

「うはっ嬉しっ」

「それだけ、じゃ」

「待ってて。すぐ行くから」



…―

律に待たされてる間、考え事をしていた。
恋人になったら、どんな風になるのかなとかどんな事すんだろうとか。
色んなこと考えてた。



「紫苑、何考えてんだ」

「え…あ、お疲れ…」



考え込んでて、律に全く気付かなかった…。
……なんか気まずい…。
一緒に帰ってるのはいいが、沈黙が続く。
不意に律が手を繋いできた。

―ピク…ッ

私は少し驚いた。
人と手なんて握ったことなかったから。



「繋ぐのやだ?」

「ち、違う、驚いただけだ…っ」

「声が裏返るくらい?」

「うっさいっ」



ム、ムカつく〜っ。
恥ずかしいんだよ…手握られるのってさ。