紫苑が使ってた部屋を、三人で片付けていた。
…一昨日までは、この部屋に…紫苑がいたのにな。
俺の目には、悲しそうに外を眺める紫苑が見える。
思わず声をかけそうになる。

「紫苑!」

ってね。


ガサガサと引き出しを片付けてると。
なんやら、“律へ”と書かれた手紙と小さな箱が。
紫苑からか?


「紫苑からじゃないの?」

「律先輩だけなの〜っ」

「うっせ、さっさと片付けろよ!」


不満そうに散った後、俺は手紙を開けた。


「律へ
手紙を読んでるということは、私はいないね。

律に謝らなきゃいけないことある。
ドレス姿見せるって言ったくせに、結婚するって言ったくせに、約束果たせなくてゴメンね。
二人で約束したのに…。
二人で夢見たのにね。
ホントにゴメンね。

多分ね、私がいなくなると、律は一人じゃ嫌だって言うと思う。
だから、私を思い出すように。
私が傍にいるっていう意味合いを持って、律にプレゼントあげる。何時も私がもらってばっかだから。
今回は私から!
大事にしてね。
私を愛したように!


律は一人じゃないからね。
例え、私の実体がなくても、私は律の傍にいるから。
錫也も、伊織も。
何時もの四人!
だから、変なこと考えないでよ!


今までありがとね。
律に出会ってなかったら、今の私はいなかったと思う。
昔の暗い私のままだった。
でも、律が私を変えてくれた。
すごく嬉しかったよ。
毎日、生きるのが楽しかった。
ホントにありがと。
私の夢は、叶えられなかったけど、律は叶えてね。
他の夢。
私と結婚して幸せな家族を持つ夢じゃなくて、私以外の人とね。


私は、律が誰よりも大好き!

紫苑」


…バカ紫苑…。
こんな手紙書きやがって…。
紫苑…俺…お前に会いたくなってきちまった…。
…紫苑…俺も好きだからな…!
二人で叶えられなかった夢があろうとなかろうと、俺はお前の分まで幸せになるからな。絶対に。
どんなに、時間が経ったとしても、俺はお前だけを愛すよ。
ずっと。死ぬまで。