「紫苑!」

「…律…やっと、来た…」


寝込んでる紫苑は、首を動かして口を開いた。
顔…すげぇ真っ白…。
死にそう、だな…ホントに。


「プリン買ってきたから、一緒に食べよーぜ?」

「ありがと」


聞こえるか、聞こえないかの微妙な声量で、俺と話す。
ふと頭を過ぎる言葉。

『二週間か一ヶ月』

こいつ、いついなくなるんだろうな。
いきなり明日とか、やめろよな?
気持ちの整理つかねぇよ。


「うまいか?」

「うん」

「よかったな」


俺、今どんな顔してる?
笑ってるつもりだけど、なんかうまく笑ってない気がする。
絶対、不安感が顔に出てそうだわ。


「姉ーさん!」

「お見舞い来たよ」

「あーっ、プリンずるい!!」

「うっせーのが来たし。な、紫苑」

「…少しね」


天海と伊織が病室に来た。
兄貴はいないみたいだった。
さすがに帰ったよな〜…。


「先輩、プリンください!」

「ねぇよ。紫苑と俺の分」

「僕達に買ってこないんだ〜ふ〜ん」

「…これ」


プリンごときで、ごちゃごちゃうっさい二人に、紫苑は自分の食いかけを見せた。


「食べかけ、よかったら」

「わー!姉さん優しい!!」

「おい紫苑!!」

「律と一個、食べよ…?」

「なっ…、仕方ねぇな!」

「照れてる〜!」

「うぜぇよ、黙ってろ天海!」


こんなに賑やかだと、紫苑が死ぬなんて嘘みたいだ。
まだ、笑う余裕あるみたいだし。
まだ…話せてるし…。
まだ…。