「で、体調はどうなんだ」


紫苑は、首を横に振った。


「…悪くなってる…」

「そんな!」

「紫苑…」


一気に、部屋が重たい空気になる。
悪化してる病気。
体を蝕む、痛みと死への恐怖。
紫苑の元気がないのも、全て再発した病気によるもの。


「紫苑、大丈夫だ」

「うん…」


自分がホントに死ぬんじゃないか、ガチで考えてる紫苑。
紫苑は死なない。
絶対死なない。
俺は信じてる。


「姉さん、大丈夫だよ…」

「また治るよ!だから、落ち込まないで!」


…―

伊織side


俺の元カノが、姉さんに迷惑かけた。
迷惑所の騒ぎじゃないけど。
元カノの真央は、嫉妬心で姉さんを手にかけようとした。
俺はそれが許せなかった。
真央が企んでたことに、気づかなかった俺も俺だけど。

遊園地行った次の日、俺は真央と別れた。
あっちもあっちで、色々パニックってて、最初は認められなかった。
だけど、ちゃんと言ったら、認めてくれた。

今日もお見舞いに来ている。
先輩達は、一旦家に帰るといい出し、病室を出て行った。
錫也先輩と律先輩が病室を出て行った後、俺と姉さんは静かな病室で無言のままだった。


「…」

「…姉さん…?」

「何?」

「…いや…その…」


何を話せばいんだろうと、俺は迷ってるずっと。
別れたことは、さっき話したし。
…そうだ…。
姉さんがかかってる病気…。


「姉さん、昨日ね父さんに姉さんの病気のこと話したんだ」

「うん」

「そしたら…母さんと同じ病気なんだって」

「え…?」

「母さんもその病気だったんだ」

「…そうなんだ…」


暗く…しちゃったよ…。
姉さんを産んで、俺を産んで、姉さんを捨てた後に、母さんは病気で死んだ。
…はっきり言うと、姉さんまで…。
いや、いやありえないよ!
姉さんは死なない。


「伊織」

「な、何?」


姉さんの冷めた目が、俺を映してる。
そんな目、やめてよ…。
最後が近い人みたいだよっ。


「あたし、母さんみたいに死なないよ。律の為にも生きなきゃ」

「姉さん…」


優しく微笑む姉さん。
元気はないが、何時もの姉さんだ。


「姉さん、父さんに会いに来てよ!」

「え?」

「父さんは会いたがってるんだ!」

「…」


考え込み姉さん。
自分を捨てた家族に会えなんて、無理過ぎるよね…。


「…会って、みようか」

「え、いいの?」

「うん」

「やったぁ!じゃ、明後日で大丈夫!?」

「うん」


俺は一人嬉しがった。
姉さんは俺の家族だもん。