知りたいと思った。
名前、年…。なんでもいいから知りたいと。
そしてしばらく晴れの日が続き、梅雨に入ったからか雨になった。雨が降り始めた最初の日、あいつクマのマスコットを落とした。それを、俺は拾った。チャンスだと思った。
次の日、あいつはあからさまに落ち込んだ様子ですみに立っていた。マスコットを渡すと、とても幸せそうに笑った。
「お礼する」と言われて、正直びっくりしたがまた、チャンスだと思った。これから、あいつと話すことができるそう思った。
だから俺は毎日バスで会うことを、お礼にしてもらったんだ…。
「よっ!薫」
校門をくぐって歩いていると、挨拶してきたのは友達の新橋 海斗。俺は海斗をギロっと睨む。
「薫言うな」
「いいじゃん、いいじゃん♪」
俺は“薫”という名前が、正直あまり好きじゃない。女みたいだから、それだけ。
「あれ?」
「んだよ」
海斗は不思議そうな顔をして
「なんか、いいことあったか?」
「なんで」
「穏やかな顔してる」
たぶん俺は今、意味わかんねぇという顔してると思う。
「いっつも、眉間に皺よってんのに今日はよってない」
「よってない日だってあるだろ」
そう言うとボソッと「自覚あんだ…」と言った。
「ま、時期にはなすわ」
「なんか、今の言い方カッケーな」
そんな会話をしながら、教室に向かう。
明日を朝をとても楽しみにしながら―――。