☆薫SIDE☆

朝、目覚ましで起きる。リビングに出ても、誰もいない。

いつもと同じ朝。

てきとーにパンを食べ、バスに間に合う時間に家を出る。いつも朝はつまらない。でも、雨の日だけは違う…。


バスに乗ると、桜ノ学園のあの女子立っていた。
下を向いて俯いている。なぜか、フッと俺は笑ってそいつに近づく。

「おい」

声をかけると、ビクっとして、バッと顔をあげた。

「あ、お、ぉおはようございます」
「はよ」

あわあわと挨拶して、ほんとにおもしろい。

「えっと…」
「あー、じゃあ自己紹介でもすっか」
「あ、はい!えっと、桃宮です、桃宮 雫です」

雫、か…。

「俺は結城 薫な」
「結城さん」

結城さんって、すげぇ年上みたいだな。

「結城でいいよ」
「や、でも」
「あんた高1だろ」
「はい」
「同い年で、さん付は変だろう」

そう言いながら、桃宮を見ると今度はポカンとしていた。

「どした」
「あ、や先輩だと思ってたから」

「んだそれ」と俺は笑う、つられたように桃宮も笑った。

そして、本題に入った。

「んで、お礼のことだけど」

そう言うと、ピクっと反応した。

「なんでもいいの?」
「もちろんです!」
「じゃあさ…」


決まっていた、昨日“お礼”と言われた時から――。