「でも、それが無性に余計に、腹が立って…。 また、走り出したら…、ちょうど雨でスリップしたトラックが、俺に向かってきた。 …その瞬間、お袋は俺を庇った。 気づいたら、お袋は俺を庇って死んでた」 なにも言えない。 声がでない。 横顔からわかる、辛そうな、顔―。 声がでないんじゃない、 声が、出せない…。 あたしは黙っていた。 声が出せるとしても、あたしは喋らなかったと思う。 ただ、横顔をじっと見ていた。