「いいね、そのスーツ。シャネルかな?」

「よくわかるわね」


驚く彼女に俺はおどけて笑って見せる。


「バッグがシャネルだからそうかなって、実はあてずっぽ」


そう答えると「まぁ」って笑ってた。

『あの時』もシャネルのバッグだったよな?

覚えてないだろうけど。

大きくデザインされたシャネルのマークを見せびらかすように腕に下げて。

目の前にあったパンプスにすらそのマークが光ってた。


ホント、

趣味悪ぃのも変わってないのな?


そのバッグから何かを取り出そうとするから、俺もすかさずポケットからライターを。


「どうぞ」


シガレットケースまであのマーク。

彼女は赤い口紅に煙草を銜え、


「ありがと」


と、俺の灯す火に唇を寄せた。