夕暮れの帰り道,

あたしは隣りに居る誰かと,今日幼稚園で歌ったうたを楽しそうに歌っている

なにこれ?

隣りに居るのは誰?
大きくて,優しくて
とても懐かしい……

……お父さん??

この場面みたことある。

あの日の,あの時の
忘れかけてた鮮明な記憶..

黒い車からでてきた怖い男の人たち

無情にお父さんは狭い路地に連れて行かれて,
突き放されたあたしはただただ泣きじゃくってお父さんを必死になって追いかけた


やめてよ…やめてよ…


泣くあたしを黙らせようと
ひとりの男があたしを突き飛ばそうとする

傷だらけになってちるお父さんはあたしを助けようと,あたしに覆い被さった

その時のお父さんは
いつもの優しい目のお父さんじゃなかった

悲しそうで
寂しそうで

小さな声であたしになにかを言っている


「蘭…大丈夫…お父さんが,守ってあげるからね…」


…お父さん…


男たちが行ったあと
お父さんはもう動かなくなっていた

ねぇお父さん起きてよ…
早く帰ろうよ…

あたしのたったひとりの
大切なお父さん…

小さかったあたしは無力で
泣くことしかできなかった