「百合子」 今の、洋二じゃ ない? 唇が強張る。舌 が上顎に貼りつい て離れなくなる。 「ん、なに?」 いやに明るい応答 に喉がかさかさと 乾いていく。ぼん やりと夜を仰いだ 。薄い紺色が、ガ ラス片のような星 をたたえている。 空の縁はまだ紫色 に透けている。 「また月曜日」 一方的に通話を終 了させた。目の表 面をひりひりさせ ながら、ほどけか けていた靴紐を結 んだ。