しっとりした緑の 匂いも淡くなり、 アスファルトに足 の裏を押し返され る。振り返る。の びのびと枝葉が交 錯した森。川の気 配はここからは感 じとれない。枝先 同士が互いにくす ぐりあうようにし て、葉をゆする。 その場から離れが たくなり、日の傾 くまでつっ立って いた。紫陽花の青 をこぼしたような 空に星を見つけて やっと、爪先を駅 に向けた。