ヒールで蹴ってみ

 たが、ゆさゆさ揺

 れるだけ。

 「あれ?」

 呼吸を乱しながら

 首をかしげる。額

 に噴き出した汗を

 腕でぬぐう。

 「なんなのもうッ

 なん……ぎゃ!」

 苛立ちにまかせて

 、地面をガシッと

 踏んだ途端、新雪

 を踏んだような柔

 らかな感触がして

 体が傾いた。

 「いた……い」

 右足だけ、太もも

 まで地中に埋まっ

 てしまったのだ。