「好きならいい。 幸せになって。洋 二をちゃんと幸せ にしてね」 頭をさげた。 「お願い」 沈黙。よそのテー ブルの談笑がごち ゃごちゃと聞こえ てきた。 「変なの」 目線をあげると、 興ざめしたように 、百合子がワイン グラスを傾けてい た。血のような赤 い色が、たぷたぷ 揺れる。 「心配しないで。 彼はすでに幸せだ し、あたしは不幸 にはならないから 。未亡人にはなっ ても、絶対離婚は しないから」