「好きでもないか

 な」

 ナイフをきりきり

 動かしながら、唇

 の片端を持ちあけ

 た。

 「嫌いでもないけ

 ど」

 「そんな……」

 そんな。怒りで瞳

 が潤んだ。そんな

 あっさりした気持

 ちに自分が負けた

 のかと思うと悔し

 かった。

 「そんなんであた

 しから洋二をとっ

 たの」

 声が震えた。

 「とったわけじゃ

 ない。仕方ないよ

 、選ばれたんだも

 ん」