「はい」

 軽く握った拳を突

 きだされた。ぎり

 ぎりと隣を向くと

 、照れたような笑

 顔があった。マフ

 ラーに顎を沈めて

 、大きな瞳でこっ

 ちを見つめている

 。吐く息がくもる

 。吸う息は歯にし

 みる。

 「手、だしてよ」

 「なに……?」

 「いいからほら」

 手袋をした手を引

 っぱられ、ぽんと

 何かを置かれる。

 彼の手がどいた。

 ころんとしたベロ

 ア素材の小箱が現

 れた。