「呼びましたか」 「呼んだ。これ」 鋭い爪をつまんで 見せると、彼は悪 びれもせずに頷い た。 「何かあった時の ために、しこませ て頂いたでありま す」 「へぇ。 遅かっ たわね、泣いてた の?」 「泣いてなどいな いですですな」 彼は胸をそらして 、作り物の牙をむ いた。 「バレバレだよ」 「幻覚でしょう。 それより木流し、 あなたのそれは何 の仮装ですか」