「それでは行こう

 マドモワゼル」

 ダンディな声色で

 言った。

  水中を漂う、無

 数の蛇の尾を思わ

 せる月明かりを断

 ち切り、川の底へ

 と坂道をおりてい

 く。塗り込めたよ

 うな闇に、まばた

 きの間隔がしだい

 に開いていく。目

 をあけているのか

 閉じているのか、

 よくわからなくな

 ってくる。心地良

 く冷えた河賢の手

 だけを頼りに進ん

 でいく。