皿に触れながら、

 彼はなんともいえ

 ない笑みを浮かべ

 た。嬉しくてたま

 らないような悲し

 くて仕方ないよう

 な悔しそうな寂し

 そうな表情だ。

 青い闇で聞いた河

 賢の低い声が鼓膜

 によみがえる。手

 を繋いでいる事が

 ほんの少し怖くな

 る。

 「少しも楽しい日

 々ではありません

 でした。だから、

 放してやればよか

 ったんです」

 閉じた目からぽろ

りと涙がこぼれる。