好物なんだろう。

 ぶくぶくとため息

 をついて、海底の

 掃除婦となる。

  どれくらい経っ

 たろう。体がぎし

 ぎしして腰を伸ば

 すと、包丁が視界

 の隅をよぎってい

 った。ぎょっとし

 て目で追うと、青

 い肌の魚だった。

 「あれ、河賢?」

 視線を巡らせて頭

 をかく。生え際か

 ら頭頂部にむかっ

 て撫でる。ひっつ

 め髪にしている時

 の癖だ。先程まで

 明るいブルーの中

 に居たはずなのに

 、今は藍色の闇ば

 かり。