何かにつっかかっ

 て、甲羅男は舞い

 あがる。

 「おお、なまこで

 すよ」

 着地して、つまず

 いた黒い塊を蹴り

 あげ、目を丸くし

 た。

 「なまこ、お好き

 ですか」

 掲げて見せる。彼

 女と彼の間を、砕

 けた鏡のような魚

 の群れが泳いでい

 く。

「食べたことない」

 見てくれの悪さに

 頬をひくつかせる

 。コールタールみ

 たいだ。