ブツブツ考えなが

 ら、それを短パン

 のポケットにつっ

 こんだ。途端に海

 水の感触が失せる

 。波は空気のよう

 に、または透明な

 砂のようになって

 、さらさらと体の

 厚みを通過してい

 く。汚れが洗い流

 されていくような

 気持ち良さに、ス

 ッと背筋を伸ばす

 。さぶんさぶんと

 優しい飛沫をあげ

 て、順調に沖へむ

 かって沈んでいく

 。すっぽりと水の

 中に入りきり、深

 呼吸すると、磯の

 香りがした。