「わしも楽しかっ たでござります。 久方ぶりに胸がき ゅんきゅん致しま した」 「……きゅんきゅ ん?」 不気味な表現に怪 訝な顔をしたとも かにはかまわず、 彼は右手を大事そ うに胸元によせた 。今しがたまで彼 女が触れていた指 を愛おしそうに眺 める。 「よろしかったら 今度は海へゆきま せんか」 「う……、海?」