「上の空ですなあ」 「はぁ」 「ここはな、聖地っ つうものなんであ るよ。しかるに、 地元民はあまり近 寄らないんじゃよ」 釣糸を垂れながら 眩しそうに目を細 める。 「へぇ。だから釣 り人が居ないのか」 彼女は川に石を放 りこんだ。魚影の ようなものがサッ と逃げていく。河 童の趣味の邪魔を する。彼はどうで もいいのか柔らか い微笑みを浮かべ ている。