洋二のことが好 きだった。好きだ ったんだ、あたし 。 ともかは重たい 紙袋を揺らしなが ら顎をひいた。首 筋や胸の谷間を、 汗が滑っていく。 むあむあと湿った 熱気で息苦しい。 もう言ってもし ようがないことだ けど、涙が出るく らいには、好きだ ったのだ。 せかせかと、か かとを鳴らせて歩 く。さわさわと髪 をすく風に、まつ 毛をふせる。目尻 に溜まっていた涙 がつるりとこぼれ 落ちる。