陽は怒りをあらわにしていたが、由美を追いかけて教室を出て行った。


陽がいなくなると……
教室に残るあたしにゆっくりと近づく。

嘘泣きも、陽には通じなかったから本性をあらわしたって感じ。






「絢ちゃんをかばってくれる人は由美を追いかけて行っちゃったね。どうして、陽と付き合ってるの?」


「どうしてって……。 好きだから」






この強気な瑞希ちゃんの眼差しに負けないくらい、あたしは瑞希ちゃんを強く見つめた。

人を傷つけることに何の抵抗も持たない人になにを言われても、あたしは平気。







「由美が陽のことを好きって知ってて奪ったんだ?」


「奪うとか奪われるとか意味が違うと思うし……。あたしは由美が陽を好きとはきいてない」


「ずいぶん強気なんだね」


「うん」


「あたしはそのうち陽の彼女になる」


「陽は絶対瑞希ちゃんを好きになったりしないよ」






こんな言い方したくない。
でも、瑞希ちゃんは由美を傷つけて陽も傷つけた。

そして、あたし自身も。

だから今は……。






「知ってた? 由美は陽に関わりたいから絢ちゃんに協力したんだよ」






人をバカにしたように笑っている。

でも、あたしは瑞希ちゃんの言葉を信じたりしない。
だって、あたしと由美が出会って仲よくなったのは……

陽と出会う前だから。
あたしと由美は陽と出会う前から仲よくしていた。







「由美からは何も言われてないし、そんなことを信じたりしない。あたしは由美と陽を信じてるから」


「……っ!! あんたなんてさっさとふられちゃえ!! きれいごとばっかり!! 別れるまでいじめてやる!!」






瑞希ちゃんはそう言って1組をあとにした。


……瑞希ちゃんに負けたりしない。
あたしは信じたい人を信じる。


そして、あたしは由美を追いかけるため教室を出た。