「陽は気づかないの? それとも気づかないフリをしてるの?」
さっきまで泣いていた瑞希ちゃんは態度を豹変させ、冷たい視線を由美に向けていた。
「瑞希……やめてよ……」
由美が瑞希ちゃんを止めようとしている。
そんなことはお構いなしに瑞希ちゃんは話を続けた。
「あたし別にいいの。陽に好かれないことぐらいわかってる。だから、嫌われるならとことん嫌われたい」
「は……なんだお前……」
陽は変わらない口調のまま、瑞希ちゃんに冷たく当たる。
呆れる……。
ここまで捻くれる?
「だから、由美がまだ陽のことを好きってことに気づいてるの?」
「……っ」
「その反応は気づいてたんだ……。気づかないフリして自分が幸せならいいってことか……」
「やめろ瑞希」
「この中で陽がいちばん残酷。わかってる?」
由美はうつむいていて……
表情がわからない。
でも、泣いてるよね?
「瑞希ちゃん……」
「あんたは黙ってなさいよ!!」
ヒステリックな声がみんなをびくっとさせる。
あぁ……
あたしのせいで由美や陽が傷ついてるんだ……。
「由美? 陽の彼女が絢ちゃんでいちばん悔しいのは由美なんでしょ?」
「……絢、ごめんね。でも……絢のせいじゃないからね……」
あたしの心を読み取ったかのように、由美はつぶやいた。
こんな時に……
あたしのこと気遣ってくれる由美……。
人を傷つけることになんの抵抗も持たない瑞希ちゃん。
そんな感じが伝わる。