「うわっ……ひでぇ」
あたしのうしろから声がした。
「ゆ……優……」
「王子様の彼女は大変でちゅね~」
「なに優。性格わるいっ!!」
「桜樹……タイミング悪すぎ」
「優……お願い!! 陽には内緒にして」
「んー……悪い。そうしてやりたいけど……」
優が指差したうしろには……陽がいた。
「絢、学習しとけ。俺と陽はかなり高い確率で一緒にいるって」
「うん……。学習した」
「じゃあ、この問題は彼氏さんに任せた。俺ら先に行くわ! 水崎、奈菜行くぞ!」
ばれちゃった……。
まさか、こんなに早く陽と優が登校するとは思わなかった。
あたしが手に持っていた上靴を陽がとり、
汚れをはらいながら落ちない汚れを見つめる。
そして、クスりと笑い下駄箱の内側に貼ってある紙を見て……
「【認めない】って……別に余計なお世話だっての」
「陽……」
「マジでお前ヤダ」
え……?
あたしがいじめられたから嫌いってこと?
そんな……
「……ごめ……」
「なんで俺にすぐいわねぇんだよ」
「え……?」
「え?じゃねぇよ。あのさ……もっと頼ってくんねぇかな? そんなに俺は頼りない?」
「違う……」
「じゃあなに?」
めずらしく陽が怒っている。
うつむいたあたしと目線を合わせるように、心配そうに顔を覗き込んできた。
「どうして俺にいわねぇの?」
「陽にはいつも頼ってるから……」
「それだけ?」
「……っ」
「ちゃんと言って。最後まで」
そう言った陽の口調は優しかった。
お願い事をするみたいに……
あたしに優しく問いかけていた。
「陽に、重荷に思われたくないから……。迷惑かけたくない」